AI教育 読解力が重要に

面白い問題を見つけました。次の問いに答えてみてください。

 

「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。」

上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか? 同じ、異なるのいずれかで答えなさい。

「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。」

 

全国2万人の中学生を対象にした学力調査の問題です。

答えは「異なる」です。中学生の正答率は、予想以上に低い57%。

中高生が、教科書を読んでも理解できないレベルになっていると、学校関係者は深刻な問題として受け止めているそうなのです。

 

この問題が、どうAIと関係しているのでしょうか? 

この学力調査は、AI研究の第一人者である、新井紀子先生が実施したものです(現在も継続)。問題は、その調査から抜粋したものです。詳しくは『AI VS. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子著、東洋経済新報社出版をご参考ください。

AIが苦手な分野が、この読解力だと先生は指摘しています。

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AIは、意味を理解してデータ蓄積しているわけではありません。膨大なデータを集積しても、限られた条件でしか応用できません。子供たちが学んでいる歴史や漢字などの暗記学習、算数は、AIが最も得意とすることだと言います。唯一苦手なのが、一読んで十を知る、推測するなどの読解なのだそうです。AIと共存していくうえで、何がこれから武器になるかというと、この読解力こそがカギを握るのだそうです。

この本を読みながら、その通りだと思いました。

問題なのは、子供たちに読解力が欠如しているということだそうです。教科書を理解できない、わかったつもりでいる、……。

有名私立校に通う子供たちも、例外ではないそうです。

まだ調査は継続しているので、これが正解ではないとは思いますが、とても興味深い本なのでぜひ読んでみてください。

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知識の詰め込みをして、子供たちに応用する能力が養われているのだろうか? 自分で考え出す力が身に付くのだろうか?と常日頃から疑問に思っています。かといって、中学受験で必要な、算数、理科、社会、国語のドリルを通して暗記学習に時間を割く、世のしくみを無視することは、とても勇気がいることです。今まではこれでよかったのでしょうが、これから同じような方法で通用するのだろうかという疑問もあります。

 

今は現実感がありませんが、10年もすれば、なくなる職業が今以上に増えていくはずです。小学生のわが子が社会人になる時には、就労者の半数が職に就けない可能性があるともいわれています。2013年のオックスフォード大学が調査した研究報告書には、702種に分類した米国の職業の約半数が消滅し、全雇用者の47%が失業のリスクがあると分析しています。

そんな大変な時代がやって来るのに、暗記型の学習に追われ、そこに追い打ちをかけるように大学入試にこれから必要になる英語の4技能「読む」「書く」「話す」「聴く」学習にと、四苦八苦して勉強した挙句、子どもたちの未来はどうなるのでしょうか?

この本では、「一に読解、二に読解、三、四は遊び、五に算数」が教育に必要と言っています。AI時代に備え、読解力を学ばせる学習塾も出ているようですが、読解力はこうすれば身に付くという科学的に裏付けされた決定打は今のところないと、この本は指摘しているので、要注意です。

色々な情報がありすぎて、翻弄されそうになりますが、文章を理解する能力、相手の言ったことを理解する能力、つまり、読解力を身に付けることは、何を勉強するにもあるいは生活していくうえで必要な土台になることは確かだと思います。そして、この読解力という土台は、英語学習にも生かせます。

親として、何ができるのか考える日々ですが、焦らず、ほんの少しでも、子どものために何かできればと思っています。